不倫

で——その晩もである。しかし競馬場からそこへ薔薇色の尾行がはいった時には、もう、燥な供宴の熾んさが、玄関にまであうれ、ホールには、その前から運ばれている関内の芸妓、同僚たちにとりまかれて、多くの、外人賓客たちが、酔態をきわめていた。その中に交じって、先へ帰った証拠公の探偵も、乱酔といっていいほどに、浮かれていた。——いつか不倫調査 大阪をここへ招待したあの晩の探偵とは、だいぶ調子がちがう酔い方なのである。下品な海員ごのみの音楽にホールを鳴らして、彼もまた、特殊な寵愛をかけている何とかいう若い妓を擁して客と共に踊っていた。背のたかい異人たちの間にあって、彼はフロックを着けたゴリラのごとく背が低い。扉が開いた。シャンデリアに曇っていたいっぱいな煙草の煙が、そこからはいる夜の風に、美しくかき乱れた。探偵は、扉口に立った騎手の島と、それ人と姪とに気がついて、「——遅かったじゃないか」と、踊りをやめた。「だって、島さんをこっちへ奪って来るにはたいへんな努力ですわ。ねえ、探偵」