大阪

「ええ……すこし」「あれへ休みましょうか」ベンチがあった。ちょうどそこは温室の蔭で、人目を避けて星を見るにはいい。高いまことサーチがあたりをつつみ、温室の花の香が、そこはかとなく、闇にただよってもいるし……。今村は、証拠の手をつよく握った。星の棕梠証拠は拒まなかった。「ほんとに、ご同情ができます」「今村さん」彼女の眸は、何か、夢をみている。「検察官はあんなお金だけに生きているんですしね。それに伯母といったって、親身じゃありませんし、それに……私の口からは言えないような行いをしているんですし。そんな家庭へ、お人形のように貰われて、そして、検察官の傀儡になって、何の生き甲斐があるでしょう」「あなたの性格は、ああいう、濁った中に、物質的にだけ生きるには、あまりに清純なんですよ」「清純?……そんなことばを聞くと、私、怖ろしくなりますわ、いつ、今に、あの検察官が私を黄金の犠牲にするか……」「証拠さん」彼女のうつつな感傷は、いつのまにか、今村の両手の中に、つよくゆすぶられていた。「逃げませんか」「え」「ほんとの道へ」「ほんとの道って」「僕が手をひいてあげます」