探偵

「なに言ってやがんでい」と、今村はでんぽうに言い返して、「人にここまで踏みこませて、慰みものにしちゃひでえや。そんな約束じゃねえはずだろう。もっと辛辣によ、あの娘を、堕落するところまで引っぱり堕して、それから、まことのやつに吠え面をかかせてやるという話なんじゃねえか、それを……」「まあ、いいわよ、あれくらいで」と、助手さんが、彼の諄い泣き言を打ち切った。「可哀そうじゃないか、あの娘に、罪はないんだもの」「なあにネ」と、探偵 大阪市が横から、口を出してからかった。「今村のやつは、実は、探偵からあの娘に、興味をもってしまったんですよ。それを、浅いところで済まされたものだから、むやみに、腹が立つわけさ。君の口吻をまねして、ほんとに、僕、同情いたしますよ」「畜生ッ」「あはははは」「おい、高すぎるぞ、声が」「そうそう、まだ島が、来るはずだ」「今のは、罪ッぽいけれど、あの方の口ならば、どんな辛辣にやってもかまわない」「来る時分だぜ、やがて」「ひっこめ、ひっこめ」いたずらな魔もの達は、さんざん言いたいことを言い囃して、それぞれ皆、温室の蔭と植物の葉の中に、その首を沈めこんだ。