浮気

誰やらそッと、燐寸を摺って、煙草をのみかけたけれど、仲間の者に低声で叱られて、あわてて揉み消してしまった。花梠の葉の闇は二十分間ほど沈黙をつづけていた。誰か、欠伸をするような声を立ててからまた五分間ほど戦ぎもしなかった。そうしている間は、別荘の裏にあたる海の音が眠気を誘うような諧調をもって聞えてくる。小蒸気のエンジンの音が、その暗い海の連想をよぶ。「来ないわね、なかなか」助手さんはとうとうしびれを切らして、第一に温室の蔭から腰をのばしてしまった。冷たい浮気調査 大阪市へ息が曇っているように秋の特有な星雲が空に夜更けていた。「ねえ諸君、まさか、木乃伊取りが木乃伊になっているのじゃないだろうね」「何とも知れねえぜ、こう遅いところを見ると」彼女が、立っと、みんな、待っていたように、一斉に首を伸ばした。棕梠の葉の中から、南洋|鬼の中から、シャボテンの中から、鉄の中から。「浮気。見ておいでよ」「斥候?」「あ。そしてね、もし島がいい気もちになって、こっちの約束を忘れているようだったら、人のいない所で、お尻を抓っておやりよ」「そりゃ可哀そうだ」と、誰か笑った——