探偵

家鴨の愉悦するような女の嬌態が、しきりとくすぐったく思えた。「ね。ね」お槙は、もう探偵のものであるように、島に唇を命じた。眼をつむって待った。男の近ずけて来る顔を心臓で想像した。彼の口臭が温く頬にさわった。鼻骨が鼻骨にふれた。そして、全身の神経が麻酔しかけたところへ、ぱッと、大阪市 探偵のつよい閃光と爆音が、彼女を撲りつけたように驚かした。彼女は、弾かれたようにベンチから飛び上がった。とたんに、棕梠の葉が手をたたくように揺れて、あたりの闇が、笑い声に騒いだ。「?……」それ人のお槙の顔へ、もういっぺんマグネを与えたら、どんな表情をしているだろうと思って、助手さんや愚連隊の男たちは、止めどなく笑いを交換した。お槙は、ふるえていた。そこに硬直したまま、誰とはなく睨みつけているのだった。そのあたまのうえを、ふわっと、白くながれてゆくマグネの煙が、島の化身のように。そばにいた島はいつのまにかそこにいなかった。「見ておいで!」彼女は、こめかみをぴりぴりさせて、うしろを振り向くと、突然、ヒステリックな声で呶鳴った。